【ジブナル・サマープログラム Day6】自分の思い込みを超えていく——「未来をつくる越境力の磨き方」を学んだ1日
ジブナルが開催する「ジブナルサマープログラム」。今年初開催となる本プログラムは、中高生向けの少人数限定・全8日間の短期集中型ビジネス教育プログラムです。本記事は、サマープログラムの様子をお伝えします。今回は、Day6のレポートです。
<ジブナルサマープログラム2026>
Day 0(7/31):未来をつくる先輩との対話 (ゲスト:畑田 氏、田中 氏、林 氏、丸山 氏)
Day 1(8/1):考えるヒケツと問いのチカラ(講師:濱 暢宏)
Day 2(8/2):売れるヒケツと人気のカラクリ(講師:村上 佳代)
Day 3(8/3):稼ぐ仕組みとお金の動かし方(講師:森 暁郎)
Day 4(8/4):ゼロをイチにするプロトタイプのチカラ(講師:加藤 彰宏)
Day 5(8/6):共感と協調のリーダーシップ(講師:若杉 忠弘)
Day 6(8/7):未来をつくる越境力の磨き方(講師:唐川 靖弘)
Day 7(8/9):未来をつくるキャリア開発(講師:中村 直太)
講師プロフィール
唐川 靖弘(からかわ やすひろ) さん

PwCにてコンサルタント、Interbrandにて戦略プランナーとして勤務後、Saatchi & Saatchiにて戦略プランニングディレクターとして外資系クライアント企業のブランドマーケティング戦略立案・施策実施をリード。
コーネル大学にてMBA取得後、同大学ジョンソン経営大学院 Center for Sustainable Global Enterpriseのマネージングディレクターとして米国にて勤務。デザイン思考とビジネスモデル開発を組み合わせながら、グローバル企業・国際機関によるナイジェリア、モザンビーク、インド、バングラデシュなど新興国での市場創造プロジェクトをデザイン・リード。
現在は、イノベーションブティックEdgeBridge社の代表として、ビジネス創造と組織変革のためのコンサルティング及びコーチングをプロジェクトベースで行いながら、次世代のリーダー育成を進めている。プロジェクトの実務経験及びアカデミックの知見を組み合わせ、社会を小さく楽しく変える越境型人材「うろうろアリ(THE PLAYFUL ANTS)」というコンセプトを提唱し、「うろうろアリを会社・社会に増やす」ことをミッションに活動を続けている。
Day6は、唐川靖弘さんが講師を務める「未来をつくる越境力の磨き方」。この日のモットーとして最初に共有されたのは「カルペディエム(Carpe Diem)」というラテン語——「今を生きろ」という意味の言葉です。1コマ目は自分の思い込みに気づき、境界の外に踏み出すこと、2コマ目は自分の好きなことから強みを見つけること、3コマ目はそれを行動につなげる小さな一歩をデザインすること。1日を通して、越境するための視点と技術を磨いていきました。
1コマ目:自分と世界の間にある境に気づこう——思い込みを揺さぶるエクササイズ

唐川さんはまず「カルペディエム」という言葉を紹介し、今日という二度と戻らない時間を仲間と楽しもうと呼びかけました。自己紹介では、マーケティングの仕事からBOPビジネスの研究へと転身した自身のキャリア、そして「アリンコ(人)を育てる仕事」という現在の活動を紹介。
唐川さん:「働きありみたいに、決められたことや言われたことをちゃんとやるということは大事な時期もある。でも今日みんなにもっと磨いてほしいのは、自分の人生を実験しながらプレイフルにつくっていく、うろうろ蟻(あり)というマインドです。」
越境力とはなにか
最初の問いかけは「みんなが考える越境力ってどんな力?」。グループで意見を交換すると、「業界や分野に限らずいろんな力をつなげていくこと」「困難に直面しても自分の考え方をつくっていくこと」「目標に向かって一直線に進むだけでなく、寄り道したり自分の分野から外れたりすること」といったキーワードが出てきました。
思い込みに気づくエクササイズ
続いて行われたのは、思い込みをゆさぶるいくつかの短いエクササイズです。まずは有名なだまし絵を15秒間見て、何が見えたかをグループで共有。「若い女性」に見えた人もいれば、「おばあさま」に見えた人もいて、同じ絵でもものの見方は人によって違うことを実感しました。

次は、9つの点を一筆書きの要領で直線を引いてすべて通すパズル。4本の直線、3本の直線、そして最後は1本の直線でと、条件を変えながら挑戦しました。「太い線で引けばいい」というアイデアも飛び出し、自分が無意識に点の外側に線を引くことを禁じていたことに気づく生徒もいました。

一筆書きの要領で3本の直線を引いて9つの点をすべて通すエクササイズ
さらに、日本と近隣国の地図を記憶だけを頼りに描いてみるワークも行われました。互いの地図を見比べると、「南半球の存在を忘れていた」「曲線で描く人と直線で描く人がいる」など、それぞれの世界の見方の違いに気づきます。最後に唐川さんが紹介したのは、大陸側から見た日本を描いた「逆さ地図」。
唐川さん:「僕たちの思い込みは、世界を見るための窓そのものなんです。時々その窓の汚れを落とさなければ、光が入ってこない。自分がどんな思い込みを持っているかに気づくことが、その第一歩なんですよね。」
この後、選択的注意に関する動画(チョコレートやカップを目で追うエクササイズ)や広告動画も題材にしながら、「一つのことに集中しすぎると周りが見えなくなる」「聞かれていないことには気づけない」といった気づきが共有されました。最後は個人ワークとして、自分がどんな思い込みにとらわれているかをワークシートに書き出す時間が設けられました。
BOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)という世界
後半のテーマは、世界人口の約半数を占めるとされるBOP(Base of the Pyramid)層です。BOP層とは、年間所得が3,000ドル(約45万円)未満で暮らす人々のことで、世界に約50億人いると言われています。

唐川さんは現地で撮影した動画を紹介しながら、現地で使用されているトイレの現状についても説明しました。その上で、「自分たちが働くグローバル消費財メーカーが、家庭用トイレ洗剤の世界売上を2倍にする方法を考える」というお題を出しました。

誰に、どんな売り方をすれば売上が伸びるのか。生徒たちはまず、世界の人々をどう分類できるかを地理・年齢・トイレの有無などさまざまな切り口でブレストしました。そのうえで唐川さんは、自身が実際にナイジェリアで撮影した映像を見せながら、BOP層の生活実態を紹介します。シャンプーや洗剤が小分けパックで売られている理由、そしてトイレが一家に一つもなく、近隣で共同利用しているという現実——先進国からは想像しづらい状況を目の当たりにしました。
この映像をヒントに、各チームは再びアイデアを練り直し、発表を行いました。

あるチームは、混ぜても安全な粉末洗剤を紙製の小分けパックで2個入り・100円で販売し、素材が土に還るリサイクル可能なものにするというアイデアを発表。プラスチックごみを増やさない視点と、月400円以下で暮らす家庭でも手が届く価格設定が評価されました。

別のチームは「そもそも掃除するトイレ自体がないなら、トイレをつくってしまおう」と、廉価版の日本式トイレとセットモデルで洗剤を販売するという発想の転換を提案。先進国と途上国で価格帯を分けるアイデアも飛び出しました。

唐川さんからは、実際にこのテーマに取り組んだ大手消費財メーカーの事例が紹介されました。トイレ掃除そのものへのモチベーションが低いBOP層の実情を踏まえ、個人ではなく集合住宅そのものを顧客として捉え直し、洗剤に加えて芳香剤などもセットにして定期訪問販売する新しいビジネスモデルにたどり着いたこと。さらに、そのビジネスの担い手自身もBOP層の若者であり、彼らに仕事を生み出すことにもつながったという「三方よし」の結末が共有されました。

唐川さん:「世の中には自分がまだ知らないこともたくさんある。みんなと同じ考え方は安心もするけれど、時には中心だけじゃなく境界の外に、思いを馳せてみる。それが視野を広げ、思い込みをぶち壊す一番いい方法です。」
2コマ目:自分の今と未来に目を向けてみよう——好きなことから強みへ
2コマ目の冒頭、唐川さんは「4,000」という数字をクイズとして出題。正解は、平均的な日本人の「健康寿命」を週に換算した数字でした(約75〜80歳分)。今ここにいる中高生はすでに700〜800週間ほどを使っており、残りはおよそ3,200週間。この数字をどう捉えるかも、ものの見方次第だと語られました。
好きなこと×努力=強み
続いて紹介されたのが、アンジェラ・ダックワース(『GRIT やり抜く力』著者)の研究をもとにした方程式です。「好きなこと×努力=強み」、そして「強み×努力=達成」。好きなことを認識しなければ何も始まらないとして、唐川さん自身、アイデアを考えるのは好きだけれどプログラミングは苦手だったという経験を紹介しました。

唐川さん:「好きなことにフォーカスしている時の方が、圧倒的に成果も出るし、人からも評価される。まずは自分の好きなことにちゃんと目を向けてあげることが、めちゃくちゃ大事なんです。」
フロリダ大学の研究(アメリカの男女7,500人以上を25年間追跡)でも、自分の強みを知り自信を持っていた人ほど、収入や仕事への満足度が高かったという結果が紹介されました。
スティーブ・ジョブズのスピーチに学ぶ
ここで紹介したのが、スティーブ・ジョブズによるスタンフォード大学の卒業式スピーチです。「Connecting the dots(点と点をつなげる)」「Find what you love(愛するものを見つけよう)」「Stay hungry, stay foolish(ハングリーであれ、愚か者であれ)」という3つのメッセージについて、唐川さん自身の言葉で解説が加えられました。
唐川さん:「点と点のつながりは、その時にはわからない。後で振り返って初めて、どうつながっていたかに気づくんです。だから、あんまり最初から予定通りにこだわる必要はない。自分の中の何かを信じていれば、他の人と違う道を歩いていても自信を持って歩き通せるから。」

心のヒーローと、自分だけの原体験
この後、「自分の心のヒーローは誰か、どんなところが好きか」を考えるワーク、そして「自分がこれまでの人生で一番嬉しかった、頑張った、楽しかったと思う原体験は何か」を振り返るワークが行われました。唐川さんは自身の体験として、高校時代に出会った英語の先生をきっかけに勉強にのめり込み、二、三ヶ月でクラス260番台から8番になったというエピソードを紹介しました。
唐川さん:「びっくりして、こんな風に努力を続けたらこんなに変われるんだと思って。そこから僕の一つの好きなことというか、今の自分を支えている姿勢は、コツコツ続けていけば絶対やれないことはないと、51歳になった今でも本気で信じているんです。」
生徒からも、「文化祭の謎解きで初めて部活で賞を取った経験から、自分がつくったもので人を喜ばせるのが好きだと気づいた」「幼少期にイギリスで英語がわからず苦労したが、諦めずに続けたことで大きく変われた」など、それぞれの原体験が共有されました。
イソップのレンガ職人と、グリット
次に紹介されたのは、イソップ寓話の「三人のレンガ職人」の話。同じレンガを積む仕事でも、「大変でつまらない仕事だ」と答えた職人、「家族を養うための誇りある仕事だ」と答えた職人、そして「歴史に残る大聖堂を建てているんだ」と目を輝かせて答えた職人。この3人目の姿勢こそが、仕事にやりがいと意味を感じる鍵だと語られました。

そのうえで紹介されたのが「グリット(やり抜く力)」という概念です。アンジェラ・ダックワースの16,000人規模の調査によれば、やり抜く力が強い人ほど、自分が何を成し遂げたいのかという目的意識を持っているという相関が見られたといいます。

唐川さん:「何を達成したいのかを描くことは、努力を続けるためのグロースマインドセットを養うのにすごく大事。叶うかどうかはわからなくても、大きな旗を一つ持っておくことが大切なんです。」
続けて、生徒たちは「15年後、世の中はどうなっていると思うか」を自由にブレスト。気候変動やAIの発展、超高齢化社会(15年後の日本では60歳以上人口が約40%になるという予測も紹介)など、さまざまな未来像が語られました。それを踏まえて、「自分は誰のために、どんな価値を届けたいのか」というニーズをワークシートに書き込み、グループで共有しました。
最後に唐川さんは、自身のキャリアの紆余曲折を率直に語りました。順調だったブランドコンサル会社を24歳で飛び出し、独立したものの、人脈もなく苦しんだ日々。本を読みまくり、演劇の脚本執筆にまで挑戦するうちに、思いがけず世界的な広告代理店から声がかかったというエピソードです。
唐川さん:「何にもがいていても、その時に真剣にやっていたことは必ず点として残る。自分がどんな点がつながるかわからなくても、今を真剣にやっておけば、必ず点はつながっていくんです。」
3コマ目:今の自分を超える小さな一歩をデザインしよう
3コマ目のテーマは「今の自分を超える小さな一歩をデザインする」こと。唐川さんはまず「ある分野で一流になるための練習に必要な時間」を尋ね、正解は10,000時間(1日3時間×10年間)であることを紹介しました。
バックキャスティングで考える
ここで紹介されたのが「バックキャスティング」という考え方です。理想の未来を先に描き、そこから逆算して今何をすべきかを考える方法。左から積み上げるように考えると人はどうしても守りに入りやすく、大きなジャンプを描いた上で、そこにどうたどり着くかを考えることが大切だと語られました。
バフェット式・目標達成法
続いて行われたのが、投資家ウォーレン・バフェットが実践していたという目標設定ワークです。まず紙に、人生で実現したい目標を無理やりにでも25個書き出します。次にその中から本当に大切なものを5つだけ選び、残りの20個は「気を散らす目標」として線を引いて消す——これがバフェット式の目標達成法の肝だといいます。

唐川さん:「時間とエネルギーは限られている。本当に達成したいことをいつも頭の中に刻んでおくこと——これがバフェットからの一つのメッセージなんです。」
選んだ5つの目標をもとに、「達成のためにどんなCAN(能力)を身につけたいか」「どんな知識や経験、人脈が必要か」をワークシートに書き込んでいきました。

IDEOに学ぶ、これからの働き方
ここで視聴したのが、デザインファーム「IDEO(アイデオ)」のショッピングカート開発プロジェクトを追った、30年以上前のドキュメンタリー映像です。専門性の異なるメンバーが対等に意見を出し合い、短期間でプロトタイプを形にしていく様子が映し出されました。
唐川さん:「この人たちは、自分の持っているスキルや専門性をうまく使って対等に働いているという実感を持っているから、生き生きと楽しく働けているんです。これからの時代は、どこかの会社に所属することがベースではなく、自分のスキルを生かしてプロジェクトごとに人と組んで働くことが、もっと普通になってきます。」
だからこそ、これからの時代に問われるのは「自分はどんなスキルを磨くのか」、さらに「どんなスキルを組み合わせて、自分ならではの能力にするのか」だと唐川さんは語りました。
意図的な練習と、1%の努力
練習は続けるだけでは不十分——アンジェラ・ダックワースの研究によれば、世界トップクラスになる人と頭打ちになる人を分けるのは「今の自分を少しでも超えようとする意図的な努力(デリバレート・プラクティス)」だといいます。

1日1%の努力(1.01)を365日続けると約37.8倍になる一方、逆に1%サボり続けると1年後にはほぼゼロに近づいてしまう——という計算が示されました。この1%にあたる時間は、1日にしておよそ10〜15分だといいます。
唐川さん:「毎日の1%の努力を真剣にデザインすること。今日から明日から、15分間どんなアクションをどんなふうにしてみたいか。それを毎日繰り返すことこそが、自分の将来、そして人生を大きく変えていくんです。」

生徒たちは、1年後の目標と、それを実現するために毎日15分間続けたいアクションを言語化し、1日の時間の使い方をどう変えるかをワークシートに書き込みました。「受験勉強のために生活リズムを整えたい」など、それぞれの決意がグループ内で共有されました。
まとめ——普通だからこそ、遊び心を持って挑戦しよう
最後に唐川さんが紹介したのは、アメリカの大学進学エッセイで必ず問われるという3つの問い——「あなたは何をしてきたか、何が好きか、何があなたの強みか」「その能力で、世の中にどんな価値をもたらしたいか」「そのために、これからの時間をどう使いたいか」。この3つを常に自分に問い続けることの大切さが語られました。
最後に贈られたメッセージは3つの「B」——
・Be Playful(もっと遊ぼう):新しい挑戦を続けて、経験や価値観を広げ続けよう
・Be Small(小さいことを認識しよう):失敗を恐れず、小さな一歩を素早く踏み出そう
・Be Social(良き社会の一員でいよう):自分の才能を、社会のためにどう生かせるか意識しよう
唐川さん:「一生というのは、この瞬間の積み重ねでしかない。今日この瞬間を大事に、楽しく、でも自分のために——本当に生きてもらうことを、僕は心から願っています。」
1コマ目では自分の思い込みに気づき、境界の外に足を運ぶこと、2コマ目では好きなことから自分の強みを見つけること、3コマ目ではその強みを毎日の小さな一歩に落とし込むことを学んだDay6。Day0から積み重ねてきたWANT・CAN・NEEDというジブナルの軸に、越境するための視点と、今日から始められる具体的な行動が加わりました。次回Day7では、中村直太さんを講師に迎え「未来をつくるキャリア開発」がテーマとなります。(Day7へ続く)

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