「正解のない世界を楽しみ尽くすための中高生のキャリア戦略」イベントレポート
2026年 9月30日(水) 21時〜(オンライン)
中高生向けビジネススクール『ジブナル』の
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AIの社会実装が進み、仕事や学びの前提が大きく揺れ動く中で、中高生はこれから何を身につけるべきなのか。保護者はどのように向き合えばよいのか。こうした問いをテーマに開かれたのが、本ウェビナー「正解のない世界を楽しみ尽くすための中高生のキャリア戦略」です。
モデレーターを務めたのは、「ジブナル」代表の濱。ゲストには、株式会社morich代表取締役の森本千賀子さんを迎えました。人材領域の第一線で長く活動しながら、大学生と高校生の2人の子どもを育てる当事者でもある森本さんが、いま輝く大人の共通点、10年後を見据えた学び、そして親としてできることを具体的に語りました。

登壇者紹介
まず濱から、登壇者である森本さんの紹介がありました。森本さんは、リクルートで長年にわたり人材紹介事業に携わった後、約10年前に起業。現在は株式会社morichで人材紹介を行いながら、社外取締役や顧問、NPO理事など多様な役割を担っています。
濱:「そんなふうにビジネスもバリバリやりながら、子育ても楽しくされている森本さんをお招きして、今日はお話ししたいと思います。」
森本さん自身も、社会人のキャリア支援だけでなく、より手前の世代への働きかけに関心を持ち、中高生向けの活動にも取り組んでいると語りました。
森本さん:「もっと手前でキャリアというものを意識する機会があったら、遠回りしなくても直線コースで自分のやりたいことを実現できる、そんな人生もあるんじゃないかなと思っています。」

「好奇心があるかどうか」――現在、輝く大人の共通点
最初のテーマは、「現在、輝く大人の共通点」です。ここ10年、さらに生成AIの登場によって起きたこの1、2年の変化も踏まえながら、森本さんは活躍する人材に共通する特性を語りました。
森本さん:「普遍だなと思うのは、やっぱり変化にいかに対応できるかということです。」
その上で、変化対応力を支える土台として挙げたのが好奇心でした。
森本さん:「どんな人が変化に対応できるのかなと言ったら、能力というよりも、好奇心だと思っています。」
森本さんは、好奇心は生まれつきの資質というより、育てていくものだと説明します。そして、そのためには変化のある環境に身を置く経験が重要だと話しました。
森本さん:「今までの経験値とか成功体験が通用しないところに放り込まれる。その瞬間はみんなフリーズするのですが、それを繰り返しているうちに養われていくのです。」
「創造とは、壊すこと」――成功体験を手放す経験
この流れで語られたのが、森本さん自身のリクルート時代の印象的なエピソードです。大切に育ててきた市場を離れ、新しい市場へ異動することになったとき、森本さんは強い抵抗感を覚えたといいます。
そのとき、創業者・江副さんから「創造」という言葉を調べるよう促され、図書館で意味を確かめたところ、そこには「創ること」だけでなく「壊すこと」も含まれていたといいます。
森本さん:「成功体験にしがみついてはいけないのだと。新しい自分に出会うためには、過去の成功体験をゼロリセットすることが必要だと受け取ったのです。」
結果として、新しい領域でさらに大きな成果を出すことができ、それが自身の飛躍のきっかけになったと振り返りました。
「成長する人の条件は素直さ」――人との関係がキャリアを開く
好奇心と並んで森本さんが強調したのが、素直さです。
森本さん:「成長する人の条件って、素直さじゃないですか。」
濱もこれに強く共感し、濱の書籍「なぜか助けてもらえる人の小さな習慣」とも共通すると応じました。森本さんは、素直さやチャーミングさが人との関係を開き、その結果としてキャリアの可能性も広がると話します。
森本さん:「キャリアは、守るより開く、だと思っています。」
さらに、いま輝いている人たちは一人で成果を出しているわけではなく、仲間がいる人だと指摘しました。
森本さん:「今、輝いている人たちは一人じゃないんです。絶対に仲間がいるんです。」
人とのつながりをどう育てるか。森本さんは、起業してみて改めて、資金やアイデア以上に人間関係こそが最強の資本だと感じたと述べました。
森本さん:「誰とつながって、誰に応援されるか。人間関係こそ最強の資本だなと思っています。」
「AIにできないものは体験」――未来に向けて必要な力
次のテーマでは、AIの社会実装が進むこれからの時代に、どのような力が必要になるのかが語られました。
森本さんは、テクニカルなスキルは陳腐化しやすい一方で、重要なのは学び続ける力だと述べます。
森本さん:「学歴よりも学習歴です。」
さらに、インプットするだけでは不十分で、アウトプットまで含めて回すことが必要だと強調しました。
森本さん:「インプットしたものをいかにアウトプットするか。この高速回転が大事です。」
また、AIが広く使われるようになっても、人間にしかできないこととして挙げたのが体験です。
森本さん:「AIは、行った気にはなるのです。見た気にもなるし、知った気にもなる。でも、自分の五感を使って体験するものとはまったく違います。」
そのため、一次情報に触れること、自分で身を置くことの価値は、これからますます高まるという見方が示されました。

「学校と塾と家だけではOSは立ち上がらない」――中高生に必要な機会
セッションの後半では、いまの中高生にどんな機会が必要かが議論されました。森本さんは、中高生を「伸びしろの爆発期」と表現しながら、その時期を限られた環境だけで終えてしまうことへの危機感を示しました。
森本さん:「学校と塾と家だけで、この第二成長期みたいなものを終わってしまうのは、ほんとうにもったいないと思っています。」
ここで森本さんが使ったのが、「自走OS」という言葉です。これは、自分で考えて自分で動くための土台を指します。
森本さん:「自分で考えて自分で動く、そういう自走OSが大事だと思っています。」
「親の目の届く範囲だけではOSは起動しない」
森本さんは、子どもたちに対して、朝起こさない、洗濯物を出さなければ洗わないなど、自立を促す関わり方をしてきたと語りました。
森本さん:「究極、私と旦那さんがいなくても二人は生きていけます。」
ただし、生活スキルだけでなく、本当に重要なのは親や学校の管理が届く外側に出ることだといいます。
森本さん:「学校の枠とか、親の目の届く範囲の中だけではOSは立ち上がらないし、起動しないと思っています。」
「社会人との出会い」が世界を広げる
そのために森本さんが重視してきたのが、社会人との接点です。自身の職場や飲み会、家庭での会議の場などに子どもたちを連れていき、大人が働く姿に触れさせてきたといいます。
森本さん:「この二人の共通点は、やっぱり社会人の人たちとの出会いです。」
子どもにとって、社会の仕事はどうしても親の仕事や目に見える職業に限られがちです。だからこそ、別の大人に触れることが重要だと森本さんは語りました。
森本さん:「こういう職業や、こういう仕事があるのだな、という興味関心を持つ機会はすごく貴重です。」
「越境」で価値観が変わる
さらに森本さんは、次男が中学時代に東京を離れ、静岡や石垣島で生活した経験を紹介しました。中学3年生のときには、石垣島でフリースクールに所属しながら地元の中学校に通っていたといいます。
この経験を通じて大きく変わったのは、「違い」を受け入れる力だったと振り返りました。
森本さん:「違うということを、彼自身が許容できるようになったのです。」
多様な価値観に触れることで、「みんなと同じでなければいけない」という感覚がほどけ、違いを個性として受け止められるようになった。それが大きな成長だったと話しました。

「親が人生を全力で楽しむことが最高のキャリア教育」――保護者へのメッセージ
最後のテーマは、保護者自身のあり方です。森本さんは、自身の子育てについて「立派なことは言えない」としながらも、ひとつだけ意識してきたことがあると語りました。
森本さん:「子どもへの最高のキャリア教育は、親が人生を全力で楽しむ背中を見せることかなと思っています。」
勉強しなさい、こうしなさいと指示するよりも、親自身が仕事を楽しみ、人との出会いを楽しみ、人生を前向きに生きている姿そのものが、子どもにとって強いメッセージになるという考えです。
森本さん:「言葉で言うよりも、生き様みたいなものを彼らの中でダウンロードしてくれているかなと思います。」
濱もこれを受け、「正解のない時代を楽しみ尽くす子どもになってほしいなら、まず親自身がこの時代を楽しみ尽くそうとすることが大事」だとまとめました。

ジブナルが目指すもの――中高生向けサマープログラムの紹介
後半では、濱から「ジブナル」が実施する中高生向けサマープログラムの紹介がありました。背景にあるのは、10代を取り巻く現実と教育構造の遅れへの危機感です。
濱は、AIによる仕事の変化、教育制度の転換の遅れ、学校現場の限界、中高生の自己肯定感の低下などに触れながら、「自分らしく生きる力」と「稼ぐ力」を育てる必要性を語りました。

濱:1つは、昨年までは科目単体のクオリティーにこだわってきましたが、サマープログラムは各科目が繋がっており、全科目をこの順番で受講することにて、
最終日の8日目には「未来のキャリア宣言」を高い解像度で語れることを目指しています。

サマープログラムは8日間で構成され、以下のような流れで進みます。
- 正解のない世界を楽しんでいる大人たちの話を聞く
- 論理的思考を学ぶ
- マーケティングを通じて相手視点を考える
- アカウンティングを通じてお金の感覚を身につける
- LPやECづくりなどのプロトタイプを体験する
- リーダーシップや越境の感覚を学ぶ
- 最終的に自分のキャリア宣言を行う
特に印象的だったのは、「完璧な計画より、60点の試作を社会へ出す」という考え方です。
この説明に対し、森本さんは強く賛同しました。
森本さん:「知っていたら、本当に参加させたかったですね。早ければ早いほどいいと思います。」
森本さん:「一瞬、こんな難しいことができるのかなと思われるかもしれないけれど、子どもたちはどんどん吸収します。できるんです。」
質疑応答――「待つこと」と「きっかけを与えること」
最後の質疑応答では、保護者から「学校の評価を気にして先回りしてしまう」「どう我慢すればよいか」という質問が寄せられました。
これに対し、森本さんは、無理やりやらせることには意味がないとした上で、エンジンがかかるきっかけをつくることの大切さを語りました。
森本さん:「エンジンがかかるタイミングのスピードは人それぞれです。」
森本さん:「待つだけではなくて、きっかけは親御さんが与えてあげるしかないと思います。」
この言葉は、本イベント全体を通じたメッセージとも重なります。子どもをコントロールするのではなく、世界を広げる機会を渡し、変化に出会う場をつくること。そこに、親として果たせる役割があることが示されました。
まとめ
本ウェビナーでは、森本千賀子さんの実体験を軸に、これからの時代を生きる中高生に必要なものが多面的に語られました。要点を整理すると、次の通りです。
- 輝く大人の共通点は、変化への対応力と好奇心
- 成長する人の条件は素直さ
- 人間関係は最強の資本
- AI時代にこそ、学び続ける力と体験が重要
- 中高生には、社会人との出会いや越境体験が必要
- 親が人生を楽しむ姿そのものが、最高のキャリア教育になる
変化の激しい時代だからこそ、答えを早く与えることよりも、問いを持ち、動き、試し、他者と出会うことが重要になる。今回のセッションは、そのことを具体的な言葉とエピソードで伝える時間となりました。
そして同時に、子どもだけでなく、保護者自身もまたこの時代の当事者であることが繰り返し示されました。「正解のない世界を楽しみ尽くす」とは、子どもに求める態度である前に、大人自身が引き受ける姿勢でもあるのかもしれません。
2026年 9月30日(水) 21時〜(オンライン)
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