【ジブナル・サマープログラム Day5】自分を励まし、仲間と進む——「共感と協調のリーダーシップ」を学んだ1日

講師若杉さんとの集合写真

2026年 9月30日(水) 21時〜(オンライン)
中高生向けビジネススクール『ジブナル』の
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ジブナルが開催する「ジブナルサマープログラム」。今年初開催となる本プログラムは、中高生向けの少人数限定・全8日間の短期集中型ビジネス教育プログラムです。本記事は、サマープログラムの様子をお伝えします。今回は、Day5のレポートです。

目次

講師プロフィール

若杉 忠弘(わかすぎ ただひろ) さん

グローバルリーダーの育成に携わるとともに、組織におけるコンパッションやウェルビーイングの研究に従事。以前は戦略コンサルティングファームにて、全社戦略や事業戦略の立案・実行支援を通じて国内外の企業をサポートした。ロンドンの教育系スタートアップを経て、グロービスでは英語MBAプログラムのディレクターや英語オンラインMBAの立ち上げを担当。

一般社団法人日本ポジティブ心理学協会理事、一般社団法人人生100年生き方塾理事。マインドフル・セルフ・コンパッション講師(Center for Mindful Self-Compassion)、コンパッション開発トレーニング講師(Compassion Institute)。
著書に『すぐれたリーダーほど自分にやさしい』(かんき出版)、共著に『職場を上手にモチベートする科学的方法 無理なくやる気を引き出せる26のスキル』(ダイヤモンド社)がある。

1コマ目:試行錯誤しながら前に進む——マシュマロチャレンジと成長マインドセット

若杉さんはまず、自身の自己紹介から授業をスタートしました。グローバルリーダーの育成に携わり、コンサルティングファームで企業の変革を支援し、自らも起業を経験。うまくいかないことも多かったと振り返りながら、教育そのものへの情熱を語りました。趣味は合気道、そして最近は仏教の僧侶にもなったという若杉さんの経歴に、生徒たちも興味津々の様子でした。
若杉さん:「本当にやりたい仕事は大抵一人ではできない。絶対一人ではできないんです。」
今日のゴールとして示されたのは、「試行錯誤しながら前進するチームワーク」「失敗しても自分を励ます前向きな姿勢」「仲間と前に進む力」の3つ。頭(知識)だけでなく、心と体も総動員して、体感的・体系的に学んでいくという方針が共有されました。

マシュマロチャレンジで実感する「試行錯誤」の力

最初のワークは、チームビルディング演習「マシュマロチャレンジ」です。乾燥パスタ20本、マシュマロ1個、マスキングテープ90cm、紐90cm、はさみを使い、自立可能なできるだけ高いタワーを立てて、その上にマシュマロを乗せる——制限時間は作戦タイムを含めて18分。4人前後のチームに分かれ、対抗戦形式で挑みました。

生徒たちは夢中になって試行錯誤を重ね、時間内に次々とタワーを完成させていきました。若杉さんは会場を回りながら、「まだまだ進化してますね」「軌道修正が早ければ早いほど立ちやすくなる」と声をかけ、うまくいっているチームとそうでないチームの両方から学びを引き出していきます。
若杉さん:「上手くいかなかった時に、どういう風に試行錯誤をするかっていうことが、ビジネスではすごい大事なんですよ。上手くいかない、だいたいのことはうまくいかない。ここから何を学び取るかというのが大事になるわけですね。」
振り返りの場面では、「安定性を何も考慮してなかった」と気づいたチームや、「マシュマロを最後に乗せて崩壊するチームが多い」という若杉さんの指摘に対して、早い段階でマシュマロを乗せて軌道修正したチームの工夫が共有されました。付箋(ポスト・イット)が、本来は「失敗作」だった弱い粘着力から生まれたヒット商品であるという逸話も紹介され、失敗が思わぬ発見につながることが語られました。

ハイタッチ20秒が2秒に——制限は自分たちの思い込みだった

続いて行われたのは、チーム全員で一斉にハイタッチをするというシンプルなゲーム。最初はルールの範囲で「20秒」を目標にしていたところ、生徒たちはどんどんアイデアを出し合い、両手を使う、まとめてタッチする、円になって一斉に手を重ねるなど、工夫を重ねていきました。結果、わずか2〜3秒でルールを守りながら完了できるようになりました。

若杉さん:「初めは聞いた時、ハイタッチ20秒。お互い全員やってくださいって言ったら、いや、無理だって思う人もいたかもしれない。でも無理じゃないんだよね。だから、どこかで僕たちは制限を自分たちで作ってしまっている。」
この体験を通して、「一人では到達できない、みんなで意見を持ち寄るからこそ、始めのルールを圧倒的に超える結果を得られる」ということが確認されました。

成長マインドセットと固定マインドセット

後半のテーマは「成長マインドセット」と「固定マインドセット」という、考え方の癖についてです。努力すればどんな能力でも伸ばせると考える成長マインドセットと、能力は生まれつき決まっていて努力ではあまり変わらないと考える固定マインドセット。どちらの見方を持つかによって、やる気や学び、チームワーク、パフォーマンスにまで違いが出てくることが解説されました。

若杉さん:「神経可塑性といって、脳の神経回路は何歳からでも書き換わる、進化することができる。学習や経験によって脳の神経回路が変化する。特にみんなはまだ中高生なので、抜群にこの進化能力が高い。」
マイクロソフトが成長マインドセットへの転換を掲げて大きな変革を遂げた事例にも触れながら、若杉さんは「毎日1%だけ試行錯誤して頑張る」ことの威力を、1.01の365乗という数式で示しました。1年間続けると約40倍になる一方、逆に毎日1%サボり続けると、1年後にはほぼゼロに近づいてしまうという計算です。
若杉さん:「毎日1%だけ頑張るっていうのは誰も気づかない。でも、それを一年、二年、三年って続けたらものすごい差がつく。試行錯誤しててももう一回やり直せばいいんだよ。」

後輩へのメッセージ

1コマ目の締めくくりは、自分自身の失敗と乗り越えた経験を振り返り、「後輩に送るつもりで」メッセージを書くワークです。自己紹介、失敗を乗り越えた経験、応援メッセージという3点を盛り込みながら、生徒たちはそれぞれのストーリーを言葉にしていきました。若杉さんも自身の中学・高校時代の部活の経験を交えながら、「失敗しても大丈夫」と思えるメッセージを後輩に語ることの意味を伝えました。

2コマ目:心にも絆創膏を——セルフ・コンパッションを知る

2コマ目のテーマは「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」です。若杉さんは、体の傷は消毒したり絆創膏を貼ったりして手当てするのに、心の傷については対処法を習ったことがない人がほとんどだと問いかけました。

若杉さん:「不安やストレスを感じたり、嫌なことがあり、心に傷を負った時に、僕たちはその対処方法を実は習ったことがありません。」
文部科学省の調査によれば、高校生の約84.9%が何らかの不安やストレスを抱えているといいます。内訳は、勉強や進路に関すること(75.5%)、性格や癖に関すること(38.3%)、友人関係(37.2%)、家庭の問題(21.8%)、学校生活全般(21.5%)など。

こうしたストレスを放置すると、心の疲れから無気力感、あら探しや周囲への当たり散らし、そして孤立へとつながっていくこと、社会人でも76%が「燃え尽き症候群」に近い状態を経験していることが紹介されました。若杉さんは柔道や剣道の「受け身」や防具にたとえながら、心を守る技術を身につける必要性を語りました。

自分への言葉、友達への言葉

最初のエクササイズは、「自分が困っている場面で、自分にどんな言葉をかけるか」を書き出し、続けて「友達が困っている場面で、その友達にどんな言葉をかけるか」を書き出して比べるというもの。多くの生徒が、自分に対しては厳しく、友達に対してはやさしい言葉をかけていることに気づきました。
若杉さん:「大切な親友に優しさを。皆さん結構、責めるってこと多分しないと思うんだよね、友達に対して。それを、自分に対しても辛い時とか大変な時とかにも向けてあげる。これをセルフコンパッションと言います。」
辛いことをなかったことにする、自分を責める、周りのせいにする、暴飲暴食で紛らわす——こうした態度はセルフ・コンパッションではないとして、若杉さんは日本人に多いパターンとして「自分に厳しくしすぎる」傾向を挙げました。

体で感じる「やさしさ」の強さ

セルフ・コンパッションは弱さではなく強さだということを体感するため、体を使った2つのワークが行われました。
1つ目は、力ずくで相手を立たせようとする方法と、力を抜いて優しく相手に寄り添う方法を比べるペアワーク。力任せにするより、力を抜いて相手に寄り添った方が、実は楽に相手を動かせることを全員が体感しました。
2つ目は、後ろから押されても抵抗せずに受け入れることで、逆にすっと起き上がれるというワーク。辛い状況に一生懸命抵抗するより、まず「辛い」と認めて受け入れる方が、力を発揮できるという体験でした。

若杉さん:「辛かったら辛いって認めてあげる。抵抗してると実は弱くなっちゃう。柔らかく受け入れちゃった方が、しんどい時っていうのはうまく乗り越えられる。」
セルフ・コンパッションは、自分らしさ(マインドフルネス)、自分へのやさしさ、人間の共通性という3つの要素で構成されます。

研究データからも、セルフ・コンパッションを実践するとストレスや不安、完璧主義、失敗への恐怖、燃え尽きが減少し、幸福感やレジリエンス、健康度が向上することが分かっています。「怠けて成長できなくなるのでは」「わがままになってチームワークが崩れるのでは」という疑問についても、実際にはむしろ成長マインドセットが高まり、自分に余裕がある人ほど周りをケアできることが説明されました。

声に出す、4つのステップで整理する

実践編では、まず「よく頑張ったね」「寂しかった」「羨ましかった」「完璧じゃなくていい」「大丈夫」といったセルフ・コンパッションのフレーズを、会場全員で声に出して確かめる時間が設けられました。
若杉さん:「自分は完璧じゃない人を認める。だから、仲間からの助けを借りる。一人ではできない、みんなでやる。そのためには完璧じゃなくていいって認めた瞬間、周りが支えてくれる。この支え合う力っていうのが、まさに共感と協調です。」
さらに、辛い出来事を①出来事を観察する ②感情に気づく ③その感情の裏にある自分のニーズを探る ④ニーズを満たす行動をとる、という4つのステップで整理する方法が紹介されました。


「友達がスマホばかり見ていて話を聞いてくれなかった」という出来事から、「寂しかった」という感情、そして「大切にされたい」というニーズにたどり着く例を通して、感情の奥にあるニーズを見つけることの大切さが説明されました。ニーズがわかれば、それを素直に相手に伝えることで、コミュニケーションもより伝わりやすくなります。

自分への応援スローガンとリマインダー

2コマ目の最後は、自分に響く短い言葉を「応援スローガン」としてまとめ、スマホの待ち受け画面に置くというワークです。若杉さんは、スマホを1日に何十回も見る習慣を逆手に取り、自分を励ます言葉を目に入る場所に意図的に置いておく「リマインダー」の技術を紹介しました。
若杉さん:「飛行機に乗ると、キャビンアテンダントが必ず酸素マスクのガイダンスをします。まず自分に酸素マスクをつけてください、そのあと周りの人のマスクをつけてくださいと。自分にまず酸素マスクをつける、それを今日やったのがセルフコンパッションですよということです。」
自分にきちんと思いやりを持てる人は、周りに対しても思いやりを持てる——このシンプルなメッセージが、2コマ目のまとめとなりました。

3コマ目:仲間と前に進もう——協力を引き出すリーダーシップ

3コマ目のテーマは「人を導く(Lead the people)」。リーダーシップにおいて大切なことは、「自分を導く(Lead the self)」と「人を導く(Lead the people)」の2つであり、午前が前者、午後は後者に焦点を当てるという位置づけが示されました。


まず生徒たちは、これまでに誰かに協力してもらったり助けてもらったりした経験を振り返り、「なぜその人は協力してくれたのか」をグループで話し合いました。そこから、協力を引き出すための3つの要素——相手のニーズ、自分のパワー、自分の行動——が紹介されました。


若杉さん
:「相手のニーズがあり、それを自分のパワーと行動で満たすことができたら、相手は動いてくれる。鍵と鍵穴がカチャっと組み合わさった感じで一緒に動く。」
パワーには、お金や権限・役職といった「公式の力」、信頼性や専門性・実績といった「個人の力」、そして人脈などの「関係性の力」の3種類があること、そしてパワーを持っているだけでは何も起きず、それを行動に移して初めて相手の協力を引き出せることが説明されました。

背中合わせで立ち上がる——「同期」を体感するワーク

この「協力」を体感するワークとして、ペアで背中合わせに座り、腕を組んでタイミングを合わせて一緒に立ち上がるという演習が行われました。バラバラに動くと全く立ち上がれない一方、相手の気配を感じ、タイミングを合わせることで、驚くほど楽に立ち上がれることを全員が体感しました。

若杉さん:「自分一人だとするとうまくいかない。相手の気配を背中で上手に感じて、息を合わせることができると、すっと立てますよ。」

協力を引き出す3つの心理原則

相手のニーズは人それぞれですが、協力関係を築くうえで知っておくと役立つ、3つの共通した心理原則が紹介されました。
・返報性の原理:何かしてもらったらお返ししたくなる気持ち
・好意の原理:好意を持つ人のお願いは聞きたくなる心理
・一貫性の原理:一度やると言ったからにはやり遂げたいという気持ち

スーパーの試食コーナーやコンサルタント時代の「まず無償でギブする」という経験、文化祭の準備で「少しなら」と引き受けた仕事がいつの間にか大きな役割になっていた経験など、身近な例を交えながら、それぞれの原理がマーケティングや日常のコミュニケーションでどう働いているかが語られました。

ロールプレイ「若葉学園の文化祭準備」

後半は、これまで学んだ原理原則を実践するケーススタディです。舞台は文化祭の準備を進める「若葉学園」。実行委員としてみんなをまとめる高橋さんと、最近参加が減ってきた佐藤さんという2人の生徒をめぐるケースが提示されました。
生徒たちはペアを組み、高橋さん役と佐藤さん役に分かれてロールプレイに挑戦。高橋役には「相手の気持ちや背景を汲み取りながら、自分の持っているパワーをどう生かせるかを考える」というヒントが、佐藤役には「本当は助けてほしい、認めてほしいと思っている」という指示書が渡されていました。

ロールプレイ後の共有では、「最初は距離のある先輩だと思っていたけれど、自分の気持ちを認めてもらえてうまくコミュニケーションできそうだと感じた」「なかなか心を開けなかったけれど、話しているうちに少しずつ変わっていった」といった感想が語られました。

若杉さん:「人間の脳は、現実と創造の世界を区別できていません。役割に没頭することで、あたかも実際にリアルに経験したかのように感じる。だからロールプレイには、実際に体験したのと同じ学習効果があるんです。」
種明かしとして、佐藤の本当のニーズは「助けてほしい」「認めてほしい」という不安であったこと、そして高橋がその不安に気づき、自分の持つパワー(役割分担を決める力、信頼を得る力、周りとの関係性の力)を使って、佐藤にもできる小さな役割を一緒に作ってあげることが解決の鍵になることが説明されました。この原理原則を知らないまま感情的に接してしまうと、お互いに追い詰め合い、関係が壊れてしまう危険性があることにも触れられました。

目標に必要なパワーを考える

最後のワークでは、生徒それぞれが自分の目標を思い描き、その実現のためにどんなパワー(公式の力・個人の力・関係性の力)を身につける必要があるかを考えました。若杉さんは、目標とは「今の延長線上ではたどり着けないゴール」であり、目標を立てること自体が今この瞬間を楽しむためのものだと語りました。
若杉さん:「目標は実現することが目的というよりは、目標を立てることによって今が楽しくなる。目標はどんどん更新されていっていいと思うんです。」
そして、どれだけ準備をしても、相手が100%協力してくれるとは限らないことにも触れ、「うまくいかなかったら、もう一回やればいい。人生は一回限りのゲームではない」というメッセージが送られました。相手のニーズばかりに気を配りすぎて疲れてしまう「共感疲れ」についても触れ、そんなときはまず自分のニーズを大切にし、セルフ・コンパッションで自分を立て直すことが大切だと締めくくられました。

まとめ——自分を励まし、仲間と前に進む1日

1コマ目では試行錯誤を重ねながら前進するチームワークと、成長マインドセットを学びました。2コマ目では、心の傷にも絆創膏を貼るように、自分自身に思いやりを向けるセルフ・コンパッションを体感しました。そして3コマ目では、相手のニーズを理解し、自分のパワーを行動に移すことで、仲間から協力を引き出すリーダーシップを学びました。
授業の終わりには、代表の濱とともにこれまでのDay0からDay5までの学びが振り返られました。問いを立てる力、マーケティングの視点、お金の動かし方、プロトタイプを形にする力、そして今日学んだ自分を励ます力と仲間と進む力——それぞれの学びが少しずつつながり合っていることが確認されました。

生徒:「向き合ってニーズは何だろうって想像して、行動につなげていくということが一番大事だと感じました。」

生徒:「失敗しても試行錯誤することが大切だということ、そして心の傷を処置することが大切であるということを学びました。」
Day0で生まれた「仮」のWANTは、根拠を持ち、問いで磨かれ、マーケティングの視点で捉え直され、そしてDay5で、自分自身を励ます力と仲間とともに前に進む力という、土台の部分がさらに強くなりました。次回Day6では、「越境力」というテーマで、さらに学びが広がっていきます。(Day6へ続く)

2026年 9月30日(水) 21時〜(オンライン)
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